ぶれないビジョンで立ち上げた新規事業を三回ピボットし現在も継続拡大中の「ピボット女王」 |秋庭 麻衣さん

秋庭麻衣さんは、株式会社LIFULLの社内新規事業制度で優勝を獲得し、11年経った現在も継続して事業責任者をされています。それまで道のりは平坦ではなく、過去3回もピボット*(*ピボットとは、事業の方向転換などを意味)したとのこと。そこにはどんなストーリーがあったのか?そして何度も方向転換することに対して、会社はどうとらえているのか?会社の新規事業に対してどのようなスタンスなのか?事業を10年以上継続する「ピボット女王」のストーリーを語っていただきました。(インタビュー by 椿)

<プロフィール>

  • 氏名:秋庭 麻衣
  • 生年月日:41歳、1979年生まれ
  • 会社:株式会社LIFULL
  • 役職名:地方創生推進部FaMグループ長
  • 職種:管理職
  • 簡単な経歴:

2004年 株式会社ネクスト(現LIFULL)新卒入社。入社1年目で妊娠・出産
2006年 社内初の育休取得者として復帰。人事部で新卒採用を担当しながら、社内でワーキンググループを立ち上げ。ワーキングマザーファザー支援制度を策定。
2010年 社内の新規事業提案制度「switch」で優秀賞獲得
2014年 事業承認を受けて、子会社「株式会社LIFULLFaM」代表取締役就任
2021年 株式会社LIFULLに会社統合。地方創生推進部FaMグループとして事業を継続。

平日の一日を聞きました!

6:30 起床・娘のお弁当作り
7:20 娘(高校2年生)登校 ・勤務開始までに家事
8:30 在宅で勤務開始(オフィス出勤の場合はこの時間に家をでます)
10:00 この時間まではタスク確認・メール返信等
10:00~16:00 お客様とのzoomアポイントや社内MTGなど。(ほとんどのメンバーが16時くらいまでなので、MTGやアポはほぼ16時まで。)
16:00~18:30 提案書作成や予算策定など集中タイム
18:30  買い物・夕飯作り(だいたい30分くらいでできるもの)
19:30  夕飯  (テレビは見ずに娘とおしゃべりしながら食べます)
20:30~ 立て込んでいる時は仕事。余裕のある時はYouTubeで動画をみるか、NetflixやAmazon primeでドラマ鑑賞。(韓国ドラマか、大河ドラマ)
22:00~お風呂
24:00  就寝

目次

  • 秋庭 麻衣さんインタビューしました!
  • Intraprene

    現在のお仕事の内容を簡単に教えてください

    地方創生推進部FaMグループのグループ長として、12名のメンバーをマネジメントしながら、子連れで働ける仕組み「LIFULL FaM」の運営を行っています。
    LIFULL FaMは「子育てと仕事をハッピーに!」をコンセプトに、ママが子育てと両立しながらWebマーケティング分野の仕事でキャリアアップすることを目指しています。現在、東京・福井・宮崎・島根の4拠点があり、空き家や空き施設を利用した子連れで来られるオフィスとなっています。
    業務内容はグループ内外の企業から受注した、Webサイトの入力業務やSNSの運用代行、Web広告の運用やバナー制作など、Webマーケティングに関するオペレーション業務を受託しています。
    現在、全国で約80名近い方がFaMフリーランスとして登録しており、子連れオフィスなどを利用しながら、子育てと両立して企業様から受託したお仕事を行っています。

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    新規事業開発に携わる事になったきっかけを教えてください

    私は新卒1年目で妊娠し出産しました。会社では初の育休取得者でしたので、復職する時に非常に不安でした。また、子供が小さいときは、仕事と子育ての両立で葛藤の連続でした。
    ただ、振り返ってみると子育てと仕事を両立してきたからこそ得られたことがたくさんあると思っています。
    優先順位をつけるタスク管理能力や、周囲を巻き込むコミュニケーション能力、短い時間で働く生産性等。
    なので、不安や葛藤をなるべく感じずにハッピーに子育てと仕事を両立できる社会になってもらいたい!という思いから、いつか事業をリリースしたいと考えていました。
    育休復帰後は人事として働いていましたが、子供が小学校1年生になったのをきっかけに、一念発起し、「経営塾」という社長が開催している事業立案塾に入塾。そこで作成した事業計画を、社内の新規事業提案コンテストに応募しました。その結果、優秀賞を受賞し、事業化の承認を得ました。

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    現在、秋庭さんが担当されている事業はどのような状況ですか?

    新たな拡大フェーズに入っています。
    2021年3月までは、グループ会社として事業を行っており、無事に黒字化も達成できていましたが、
    4月からは今後の事業拡大を考えて親会社の1事業として運営することとなりました。
    LIFULLFaMは地方に拠点展開していましたので、親会社で注力している地方創生事業とシナジーがあること、また拡大フェーズにおいて投資が必要ということもあり、7年ぶりに親会社に戻りました。
    事業としてはそのまま存続していますので、業務内容は変わらないのですが、新たな拡大戦略を現在検討中です。

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    事業責任者になってよかった!と思えるHappyなエピソードがあれば教えてください!

    想いに共感してくれる仲間が徐々に増えてくるのが一番の喜びです。

    私のサービスの場合は、「子育てと仕事をハッピーに」がコンセプトなので、それを実現して楽しく働いている仲間が増えることが、何よりもうれしいです。
    LIFULLFaMのメンバーには出産後ブランクのある人や、PCを使ったお仕事未経験の人もいますが、みんな着実にスキルアップをして活躍しています。
    また、子連れで来られるオフィスなので、仕事だけでなく子育てについても語れるコミュニティが自然とできています。
    FaMで仕事をすることが楽しい!FaMがあったから仕事と子育ての両立ができている!と言ってもらえることが一番うれしいです。

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    逆に、事業責任者になって、大変だったことや苦労したことは何ですか?

    当たり前ですが、事業を継続させるということが一番大変でした。
    新規事業の成功率は10%といいますが、私の事業も順調だったわけではありません。事業立ち上げから7年間経ちましたが、その間紆余曲折を経て現在に至ります。
    まず、2014年に最初に事業を立ち上げていますが、その際はパパママ向けの子育て連絡帳アプリを開発・運営していました。
    当時のLIFULLの方針は3か年の事業計画で必要経費を資本金として渡して、資金がなくなった時点で事業終了という仕組みでした。
    結局2014年10月に立ち上げた後、アプリでマネタイズがなかなかできず、2016年秋には事業撤退をするしかない、、という状況でした。
    ところが、事業撤退の議案を提出した経営会議当日に、別のグループ会社から出資の話があり、LIFULL100%子会社から、グループ会社の株式会社LIFULLMarketingPartners(LMP)の100%子会社として再出発しました。
    そこから資金の借り入れ・返済もしながら、なんとか継続し、今年の4月に今度はLIFULL統合ということで会社ではなくなりましたが、現在も事業継続しています。

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    秋庭さんは社内で「ピポット女王」と言われることもあるそうですが、今までどんなピボットをされたのですか?

    ピボット女王かわかりませんが、以前同期からそう言われたことがあります(笑)
    というのも、実は事業承認前から数えると、3回ピボットしているんです。
    まず、社内の新規事業提案制度では保育園と親の連絡システムの事業で優秀賞をもらいましたが、
    その後のフィジビリで当時はまだ事業化は難しいと判断しました。そこで、保育園と親ではなく、まずは両親がチームになって子育てをすることが必要なのではという発想で、事業化の承認を得た時にはパパとママの連絡帳アプリ事業に変更しました。
    ただ、そのアプリ事業も前述のとおりマネタイズが難しく、2016年LMPの子会社に移籍するときに、現在行っているママの就労支援事業に変更しました。

    東京緑ヶ丘のオフィス風景
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    ピボットをすることについて、ご自身、また社内ではどのように思われていますか?

    うーん、どう思われているのでしょうか。。「しぶといな」と思われているんじゃないですかね?笑 
    ただ、LIFULLはチャレンジして失敗した人を称えようという文化があるので、1度事業が失敗しても次のチャンスはたくさんある会社だと思います。他の人もピボットして続けようと思えばできるんだ!という事例になったのでないか、、と思ってます。

    Intraprene

    素晴らしい文化ですね!なぜピボットができて、ピボット後も継続できているとお考えですか?

    ぶれないビジョンを持っているということが理由だと思います。
    事業はピボットしていますが、「子育てと仕事の両立を支援したい」というビジョンは一貫して変わりません。
    事業というのはビジョン達成の手段だと考えていますので、手段は1つではありません。時代背景によっても手段はどんどん変わっていくものですので、柔軟に考えれば良いと思っています。
    また、ビジョンが明確なことで、そのビジョンに共感してくれる人が応援してくださり、1つの事業がダメになっても次のチャンスを持ってきてくれているんだと思います。

    Intraprene

    今、秋庭さんが取り組んでいることはどんなことですか?

    より多くの子育てと仕事を両立したいと考えている人に価値を届けるため、自治体を巻き込んだサービスを検討しています。
    現在、展開している福井県鯖江市や島根県雲南市は自治体の方と協力をして、子連れオフィスを開設しています。
    LIFULLFaMが展開することで、地方の子育て層の暮らしやすさや移住促進に繋がると考えています。

    島根雲南開所セレモニー
    島根雲南開所セレモニーの様子
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    今後の目標やプランを教えてください!

    もちろん引き続き事業拡大に邁進していきたいと考えています。
    それと同時に、せっかく7年ピボットしながらも事業を継続してこれたので、この経験を活かして、事業開発したい方に経験シェアをして支援していきたいと考えています。

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