椿さんは、連続社内起業家(シリアルイントレプレナー)として活躍した後、経験を活かして、新規事業塾や新規事業をメイン担当とした社外取締役などで活躍中。
社会人になってからずっと新規事業を続けてきたというエネルギーは一体どこから?という疑問に答えると共に、トップランナーでありながら2児の育児との両立についてもお伺いしました。
<プロフィール>
- 氏名:椿 奈緒子
- 会社名:メンタリング株式会社 代表取締役|株式会社リミックスポイント 社外取締役
- 所属団体:パワーママプロジェクト 共同代表|MASHING UP コミッティメンバー
- 職種:新規事業企画、新規事業推進、事業企画など
- 簡単な経歴:千葉市出身、上智大学外国語学部卒、総合商社を経て株式会社サイバーエージェントに入社。広告営業を経て第一回社内事業プランコンテストのグランプリ、事業責任者となる。2005年にサイバーエージェント社とサイボウズ社との合弁会社でcybozu.net株式会社を立ち上げ、後に代表取締役CEOに就任。その後、社内起業で通算7つインターネットサービスの立ち上げを連続で行う。2018年にYOLOJAPANへ取締役COOとして参画、2020年4月末退任後、フリーで新規事業顧問業務を行う。2020年10月にメンタリング株式会社を設立。プライベートではブラジル人夫の妻、二児の母、ワーキングマザーのロールモデルをシェアする「パワーママプロジェクト」共同代表でもある。著書「ワーママ5年目に読む本」光文社
- ご自身の年齢 :41歳、1979年生まれ (子どもは2012年、2016年生まれ)
現在のお仕事の内容を簡単に教えてください
私が代表をしているメンタリング株式会社では、新規事業のメンタリングや新規事業人材の教育を行っています。私が社外取締役をしている会社では、新規事業周りやデジタルマーケティング、企業カルチャー周りを担当しています。他にも大企業の新規事業アドバイザー的な役割で、プロジェクト立ち上げに入っていたりします。色々やってますね(笑)
平日1日のスケジュールを簡単に教えてください
7:00 起床・子ども起こす・朝食・身支度
8:00 子ども送り出し(保育園・小学校途中まで)
8:30 朝の運動&ニュースチェック
9:00 打ち合わせ、業務
12:00ランチ
13:00 午後の業務を開始
18:00 終業、保育園お迎え
19:00 夕食・お風呂
21:00 読み聞かせ&寝かしつけ(寝落ちすることも多々)
23:00 フリータイム(学校・保育園の諸々チェックや読書など)→就寝
リモートワークで歩かなくなってしまったので、午前中は作業時間にして徒歩20分ほどのカフェにわざわざ行って作業することが多いです。
新規事業開発に携わる事になったきっかけを教えてください
新卒入社時から新規事業に関わりたいと伝えていて、商社での配属時に新規事業に配属してもらったのが初めての新規事業との関わりでした。
転職する時も「私はどうしても新規事業がやりたいです」と転職し、初めて新規事業責任者になったのは、入社半年後、24歳の時、サイバーエージェント時代の事業プランコンテストでグランプリを獲得して責任者になりました。
サイバーエージェントに入社した当時、新規事業がしたくて入社したものの、いきなり新規事業は難しいだろうから、入社5年後には事業責任者になりたい、というキャリアプランを描いていました。まさか入社半年で叶うとは1mmも想像していませんでした(笑)
振り返ると、社会人1年目から新規事業にこだわっていたようです。
ちなみに私がなぜ新規事業をしたかったかというと、学生の頃から事業をゼロから作ることに憧れていて、いつか自分で立ち上げたい、だから会社員でも事業立ち上げを仕事にしたい、と思っていたからです。
学生の頃からよく、「起業しなよ」と言われましたが、私は起業するということ自体には興味がなく、大金持ちや成功者になりたいという欲もなく、シンプルに事業開発の仕事がしたいんだ、自分が実現したい事業を会社の中でアセットを使いながら実現したいんだ。と思い続けていました。
商品・サービスを生み出したエピソードを教えてください
立ち上げた事業は全部で10個以上あるので(笑)もっとも印象深かった初めての事業のエピソードをお伝えすると、初めての事業はコスメのサンプリング事業を提案しました。当時、コスメ系の広告主がサンプル購入でサンプル費用の4倍ほどの獲得単価の広告費を支払っており、広告費が高いなと広告営業の私は日々思っていました。
そこで、試したい消費者にまとめてサンプルを買ってもらってから気に入ったアイテムを本購入した方が、消費者も納得いく選択ができ、広告主も広告単価を抑えることができて、お互いハッピーなのではと思い、試してから買える仕組みを提案しました。また、当時他社で試せるサンプル付き雑誌が大ヒットしていたのもあり、それをネットで実現したい、という事業企画でした。
事業開発をしていてよかった!と思えるHappyなエピソードを教えてください!
事業案をディスカッションしているときに、「神アイディア降臨!」みたいなタイミングってありますよね。あのタイミングは最高に気持ち良いです!結局どこかで難題にぶつかりますけどね(笑)
リリースまでチームで力合わせて準備して、世に出すタイミングは、最高にやりがいを感じます。出しちゃっていいの?本当にいいの??のような緊張感とともにリリースするタイミングは、みんなで頑張って産めたね!!というチームワーク感や安堵感、最高です。
それと、初めてお金を払ってくれるお客さん獲得の時。ただのアイディアだったものに対してチームが素晴らしいサービスに仕上げてくれた結果、世の中に価値を認めてくれた感じがして、本当に嬉しいです。
さらには、事業目標を達成した時。どうしても新規事業は予測が立てずらく目標達成しにくいのですが、チーム全員諦めずに達成目指して全力尽くした後の達成感は、耐え難い嬉しさです。
総じて、先の見えない事に対してチームワークで乗り切って価値を認められる時の達成感が最高ですね!!
7つの事業のうち、5つは失敗してクローズ。失敗するときの精神状態は?
逆に、事業開発をする上で、大変だったこと、苦労したことは何ですか
20代の頃は、”若い女性が事業責任者”という事自体、なかなか認めてくれない人もいて苦労したこともありました。そういうケースは、実績出して認めてもらうしか無いのですが、新規事業なのでその実績が計画通りに行かない時も多くて。
計画通りに行かずに計画変更が必要になるとき、うまく行きそうな計画にできない時は本当に辛いですね。
「これ以上良い案が思いつきません。袋小路です…」と、担当役員に相談して、一緒にうーんと考え込んだことが何回あったことか。。
事業責任者が事業の勝ち筋が見えなくなったら、そこで勝負は終わり。
”どんな状況でもへこたれない、やりきる人”という強みを持ちながら、これ以上無理です、と言わざるをえない状況は、辛いです。
辛いですが、負けを認めて終わりを見届けるのも一つの大事な仕事だと思っています。また、”挑戦者にはセカンドチャンスを”という考えのもと、次もチャレンジする前提で責任持ってポジティブに終わらせる事、終わらせた事を記録して、後に続く人へフィードバックする事も大切だと思っています。
事業を閉鎖した後は、どのような動きをしているのですか?
事業を閉じた後も、”また新規事業を立ち上げたいです”と宣言しています。やはりゼロから事業を作るのが好きでした。
次の事業の種が無い場合は、他の事業を兼務する事もありました。既存事業のチームに入れてもらう時は、なんとしても自分のValueを発揮しようとして、いつも心の中では焦っていた気がしますね。他の事業を兼務しながら事業案出しを続けていた時もありましたが、なかなか事業が決まらなかった時は辛かったですね(苦笑)
次の新規事業にチャレンジする動きを続けることで、ポジティブに「シリアルイントレプレナー」を体現しようとしていたと思います。
今、取り組んでいることを教えてください。
自分で会社を起業しまして、「メンタリング株式会社」という会社を立ち上げました。将来的にはどんどん事業を生み出す事業開発会社にしたいのですが、まずは日本全国の企業内で新規事業が生み出させるように、事業責任者の育成や、一緒にプランニングしていく伴走メンタリングを始めました。
伴走メンタリングと言っても、事業責任者の頭の中の整理のような事はもちろんするのですが、実は私の事業開発実績の半分以上は事業提携によるもので、企業のパートナーシップから事業立ち上げを超高速に行うのが得意です。なので、アセットを活かして提携の要素を入れた事業開発として進める事が多いです。
また、事業を立ち上げる上での組織づくりもずっと取り組んできたので、「新規事業がスピーディに回るように、自走するチームワーク」などの会議をしたりする事もあります。「施策爆増会議」「業務捨てる会議」「KPT会議」「成長する1on1」など。
事業案を生み出すこと、そして自走できるチームを作ることは、部分的に仕組み化が可能なので、今後日本中の企業内で新規事業が生まれるように、量産できるようにしていきたいですね。
新規事業は常にハードワークなイメージですが、子育てとの両立はどうしているのですか?
子育ての両立の件、よく聞かれます(笑)
第一子の出産時は、こう見えてとても不安になりました。出産したら私の戻るところは無いのではと不安になり、マミートラックにハマってもう事業責任者や社長はできなくなるのではと不安になったり。やっぱり身近に同じような事例がないと、人は不安になるものですね。
恐らく私がそこまで不安だったことは、誰も想像していないと思います。今思えば完全に私の勝手な思い込みですね(笑)
色々不安もあり、第一子は産後3ヶ月後には復帰しました。その時は「復帰早すぎ!」と散々言われましたし、初の子育てという事もあり色々辛い時もあり、それはそれで良い人生経験でした。
復帰後、半年もすると、辛い経験や社会への疑問のアンサーとなるような「パワーママプロジェクト」を始めたり、考え方や働き方も変わり、視点も変わり、社会人としても大きく成長したと思います。
ワーキングマザーになってからも海外出張も2回行く機会に恵まれ、想像とは違いとても自由に、コントローラブルに働くことができました。
ちなみに第二子は育休1年半取得しました。
現在でも夫と(なるべく)50:50で、5歳女子、8歳男子の子育てしながら仕事していますが、もちろん子どもがいなかった時よりは俄然タスク量は多いものの、子育てで見えてくる世界、社会、経験、自己成長もかなりプライスレスで、事業開発視点でも着眼点が広がり、とてもプラスに働いているなと感じます。
今後の目標やプランを教えてください!
事業開発が大好きなので、生涯死ぬまで事業開発に関わっていたいです。
その中でこれからは、引き続きではありますが、手がける事業を大きくすること(上場経験したい)、
さらに関わり方のバリエーションを増やして、様々なパターンで事業開発に挑戦してみたいですね。
・会社員として事業責任者(経験済)
・経営者として事業責任者(経験済)
・外部パートナーとして事業責任者をサポート(経験中)
・教育者として事業責任者を育成<今チャレンジ中>
・事業開発会社の経営者<今後チャレンジしたい!>
・投資家として事業責任者をサポート<今後チャレンジしたい!>
言葉にするといつか叶うはず。
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イントラプレーヌを立ち上げる直接的な理由でもあるのですが、日本にはとにかく、女性の事業責任者が少ない。前から感じていた課題でした。
「女性起業家」は社会を上げてたくさん応援してくれる人が増えたので、ここ10年間でだいぶ増えてきたとは思うのですが、社内起業家の女性は本当に少ないまま。だから、私は女性の事業プロデューサーを増やしたいと思い、<新規事業椿塾>を開催したいと思いました。
人口の半分は女性で、消費者も半分女性なのだから、女性視点の事業開発リーダーがもっと増えた方が、日本の経済発展につながると心から思っています。
私の経験談ですが、シリアルイントレプレナーを17年もしている間、「新規事業について実践的な内容を学びたい」「客観的視点で事業相談や壁打ちできるメンターに出会えない」と長年悩み、周りでも同じような悩みを持ち、孤独と戦う悩みを伺っていました。
その状況を打破しようと、私もビジネススクールに通ったり、勉強会や飲み会を主催したり、参加することによって知見や繋がりを広げてきた経緯があります。
ただ、企業文化、業界特性やライフステージの変化により、なかなか女性がネットワークを広げにくいことや、ガラスの天井を感じることも実感したのも事実です。
まだまだ私は現役事業プロデューサーですが、今まで頂いた機会・経験そしてご縁のおかげで新規事業のアドバイザーを拝命することも増えてきました。人にアドバイスできるようになった今こそ、あの頃私が欲しかった内容を詰め込んで、事業プロデューサーを増やしたいと思い、<新規事業椿塾>を開催したいと思いました。
新規事業のフレームワークや進め方を学ぶだけであれば、たくさん素晴らしい本があるので、本からインプットした方が良いと思います。大事なのはインプットからの、アウトプット。
「事業を立ち上げたい」という同じ想いを持つ仲間と一緒に学びを深めながら、事業ブレストや事業ディスカッションをしながら自分の事業プランを創り出す場所を作りたかったので、まずはオンラインサロンという形で挑戦です。
社内の新規事業でやりたい事は頭の中にあるのだけど、まだクリアになっていなくて実行に移せてないという方、背中を押してくれる方がたくさんいると思うので、ぜひお越しください!
最後に、現在、そして未来のイントラプレーヌに向けてメッセージをお願いします!
イントラプレーヌというキャリアは心からオススメです!
その理由は:
1)好きな事、心からやりたい事を仕事にできる
2)自分の興味や感性を事業に活かせて、それが強みとなる
3)リーダーになりやすく、非階段式のキャリアアップが可能
4)独立起業と違い、社内起業はリソースが豊富
5)失敗しても、会社員だから次がある
社内の事業なので会社のお金を使うため、もちろん自分でやりたいことをそのままできる訳ではなく、決裁者を説得できないと先に進めませんが、活躍しているイントラプレーヌの共通点は、応援してくれる決裁者も全力で巻き込んで実現している方が多いです。
さらに、会社としてもイントラプレーヌが活躍して事業拡大してくれれば、収益貢献だけでなく多様性の活躍のケースになり間違いなく高評価に繋がります。
とにかく、イントラプレーヌに挑戦する価値があります!
是非、「いつか起業したい」と思っている方は、「いつか社外で挑戦したい」とは言わず、今いる社内で事業を立ち上げるべく、手を挙げて打席に立ってみてください。
社長さんもきっと喜ぶはずです。
私は心からイントラプレーヌを増やしたいと思っているので、背中を押して欲しい方、相談したい方は、どうぞお気軽に声をかけてくださいね❤️