イノベーション創出をテーマにあらゆる境界を連結する「ヨコグシスト®」|伊能 美和子さん

伊能さんは、NTTグループで20年にわたり、新規事業を創り続けてきた「イントラプレーヌ」の草分け的存在です。現在は同じインフラでも「通信」から「エネルギー」の領域に軸足を移し、TEPCOグループにおいて新事業開発の仕組みを作る仕事に従事する傍ら、複数の上場会社の社外取締役や団体の理事を務めるほか、仲間と起業するなど、パラレルキャリアの道を歩み始めています。

いろいろな仕事を同時にこなしながら、新たな価値を創造するというチャレンジはいったいどうやったらできるのか伺いました。

<プロフィール>

  • 氏名:伊能 美和子(いよく みわこ)
  • 現在の仕事:
    東京電力ベンチャーズ株式会社 チーフイノベーションオフィサー
    株式会社学研ホールディングス 社外取締役
    株式会社タカラトミー 社外取締役
    株式会社ヤマノホールディングス 社外取締役
    情報経営イノベーション専門職大学(iU)超客員教授
    一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム専務理事
  • 経歴: NTTグループにおいて20年超、シリアルイントラプレナーとして、音楽著作権処理プラットフォーム、クラウド型デジタルサイネージソリューション、日本初MOOC(大規模オンライン講義配信サービス)など、計10以上の事業やサービスを立ち上げた。
    事業創造のモットーは、ステークホルダーと共に市場創生から業界全体のDXまでをターゲットとしつつ、「培地」を作り、その中で化学変化を起こす「触媒」としての役割を果たすことで、自社サービスの提供に留まることなく、発起人として「デジタルサイネージコンソーシアム」、「JMOOC」などの業界団体設立も主導した。 自ら立ち上げた(株)ドコモgacco代表取締役社長、タワーレコード株式会社代表取締役副社長を経て、2020年に東京電力ベンチャーズに転職。また、パラレルキャリアで複数の企業の社外取締役、設立に関与した大学の客員教員、関連団体の代表副理事も兼任し、「バウンダリースパナ―/ヨコグシスト®」として活動中。

    プライベートでは、フルタイムで働きながら実母の介護を18年に渡り経験。
    趣味は沖縄伝統の染色技法「紅型(びんがた)」による作品制作。
    日常着、仕事着としての和装を実践中。 著書に「自分を成長させる最強の学び方: MOOC日本版!」(総合法令出版)がある。
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多彩・多才、公私ともに豊かなパラレルキャリアの実践者

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現在のお仕事の内容を簡単に教えてください

東京電力ベンチャーズの「チーフイノベーションオフィサー」として、東京電力グループ各社と、スタートアップを含むアライアンス先の「探索」や新たな価値の「共創」による新規事業創出を担う仕組みづくりをするのが仕事です。
社外取締役を務める会社においても、またプロボノで関わる複数の団体においても、共通しているテーマは、一言でいうと「イノベーションの創出」です。
加えて、女性のキャリア開発をサポートする活動も始めました。
パラレルに働いていますが、いずれも「イノベーション」をテーマにしていて、それらに横串を通したり、人材開発をしたりするという共通項があり、一人でオープンイノベーションをしている感じです(笑)
昨年来、リモートワークが多く、移動時間が無くなった分、小刻みにさまざまな活動を効率よく行うことができるようになりました。

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平日1日のスケジュールを簡単に教えてください

6:30 起床、猫の世話、身支度、朝食
7:30 ニュース&メール&SNSチェックで情報収集、情報交換
9:00 業務開始
12:00 ランチ
13:00 午後の業務開始
19:00 業務終了
20:00 夕食
21:00 仕事以外のプロボノなどの活動時間
23:00 フリータイム→就寝

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新規事業開発に携わる事になったきっかけを教えてください

NTTコミュニケーションズでメディア系企業をアカウントし、ユーザ業務においてITを活用したソリューションを提供するのがミッションだった時に、NTT研究所の基礎技術を応用したビジネス開発を手掛けることになり、PoCを重ね、サービスをローンチしながら、ピボットを重ねて、自分自身もグループ内転籍をしながら6年がかりで業界横断のプラットフォームを作りました。その時の醍醐味が忘れられず、新規事業開発の「沼」(笑)に入り、技術や業界や会社を変えつつ、取り組み続けています。

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複数の仕事をこなすパラレルキャリアを実践するうえで工夫をしていることはありますか?

いろいろなことをやっているので、ブッキングミスや、対応忘れなどに気をつけています。To doリストを作るだけでなく、それをやる時間をスケジューラーに入れて確保するようにしています。
夜の時間や、週末も有効活用しています。「ライスワーク」「ライフワーク」「ライクワーク」が混然一体となった感じで、仕事とプライベートの境目がはっきりしないのでできるのかもしれません。
「やらされ感」を持たないように、「やりたくてやっている」と思えるよう、自分から仕掛けていくようにも心掛けています。
そうやって工夫していても、疲れてくるとうっかり忘れたりしてしまうこともありますが…汗

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長く働く中では、ご自身のことだけ考えるわけにはいかない時期もあったのではないでしょうか

母の介護をしていた18年はいろいろなことがありましたね。

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フルタイム勤務のまま、お母様の介護をされていたのですか?18年…。それは簡単にはお伺いできないご苦労もあったと思いますが、お話しいただける範囲でご経験をシェア頂けますか?

新婚旅行の滞在先ホテルに、母がクモ膜下出血で倒れたと父から連絡があったんです。一命をとりとめたものの、後遺症として「高次脳機能障害」になりました。

特に新しいことを記憶することができなくなったので、一人で生活することは難しくなりました。病院でのリハビリを経て、中途障碍者向けの施設などに通っていましたが、今度は突然父が他界してしまって。

要支援/介護の母と当時独身の弟だけの生活は困難だったので、夫の理解も得て、祖父母の家だった空き家を建て替えて、母を引き取り同居することにしました。

そこからは、仕事のほかに長期のプロジェクトを受注してしまったと思い、プロジェクトマネージャーのように、行政の担当者、ケアマネージャーさんや、ヘルパーさん、作業所などの施設の方々の力を借りて、母の体調や私のスケジュールを見ながら、できるだけ母が混乱せず規則的な生活ができるようにしました。

それでも、突然いなくなって遠くの警察に保護されて迎えに行ったことや、血液の成分コントロールができず、体調を崩し入院するなど、突発的なこともたくさんありましたが、夫と二人三脚で何とか乗り切ってきたという感じです。

管理職にちょうど昇格したころ、建て替えが終わった新居でパーティをやって、職場の仲間を招待し、実際の母を見てもらったりしながら、会社でも包み隠さず状況を話したりして、理解してもらっていた、というのも本当にありがたかったです。

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職場のみなさんの理解があってこそ、だったのですね
それでも長い期間に渡ってのご負担は計り知れないものだったと思います

介護は終わりの見えない長期戦、しかも、元気な頃の親を知っているから、衰えていく姿を見るのが本当につらい。なので、全部を抱え込むことはしないように、ある意味、全部は自分ができないことを許容することが大事だと思います。

私を支え、仕事を続けさせてくれたのは、「仕事を続けてね、頑張ってる姿をパパに見せたいね」という母の言葉と、夫の全面的なサポートでした。

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お母様とのお写真がほんとうに素敵です

ありし日の母と、神代植物園に行った時のものです

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介護などの事情で離職せざるを得ない方も少なくないと思いますが、職場の理解を得ながら介護されていたお話しは、きっと同じような状況のかたにとっても力になると思います。

最後に、お仕事の今後の目標やプランを教えてください!

タコつぼ化しているあらゆる組織、特に大企業に横串を通す「バウンダリースパナ―」という役割の重要性をアピールし、横軸で活躍をする人を増やしていくことで、風通しが良く、イノベーションが生まれやすい「培地」を作りたい。
そこで自ら社会課題と向き合ってビジネスで解決していこうとするイントラプレナーを増やしたい。
さらに、そうした横串人材や社内起業家というキャリアを、女性達にも担ってもらいたい。
そのためのさまざまな活動を多面的にやっていこうと思っています。

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事業を開発することで、自らの居場所を創り出し、社会課題の解決をしていくようなマインドとスキルを持ったイントラプレーヌのコミュニティを作り、イントラプレーヌが女性の有望なキャリアになるようにしていきたいです。
今、イントラプレーヌとして新たな価値の創造に日夜邁進している人も、いずれそうした仕事にチャレンジしたい人も、ぜひご参加をお願いします!

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